
サワールージュの魅力(食材王国みやぎ12月の地産地消〜番外編〜)
煌びやかなイルミネーションに彩られ、一年で最も華やかさを増していく季節。
若かりし頃のようにおしゃれをしてディナーに出かけることもなくなりましたが、家族の好きな料理やケーキを用意して、静かに過ごすクリスマスもなかなか味があるものです。
近所にお気に入りのケーキ屋さんがないことも理由の一つですが、なんと言っても家族の喜ぶ顔が見たくて毎年ケーキを作っていると言ってもいいかもしれませんね。
家族の好みに合わせてあれこれ考えている時が、実は一番ワクワクしている気がします。
今年は宮城県が開発した新品種の「サワールージュ」と言うリンゴが手に入ったので、贅沢にも中身がぎっしり詰まったタルトに決定!
我が家では残念ながらリンゴと相性のいいシナモンは全員苦手なので、使いません。
なにより「サワールージュ」の甘酸っぱさを満喫するタルトです。
食べる時にはオーブンで軽く温めるとより一層美味しくいただけますよ。
バニラアイスを添えてもgoodです♪
◇タルト生地
タルトは手順の多いお菓子ですが、前の日にタルト生地とアーモンドクリーム、コンポートを作っておけば、当日は少ない手間で作れますので、是非チャレンジしてください。
かぼちゃのタルト(2007年10月12日掲載タルト生地参照)を参照しタルトを仕込みます。
材料(仕込みやすい分量)
・発酵バター(食塩不使用) 150g・粉糖 60g
・グラニュー 40g
・卵(L) 1個
・塩 2g
・皮付きアーモンドパウダー 75g
・薄力粉 230g
準備
・薄力粉は2回振るっておく・粉糖とグラニューは合わせて2回振るっておく
作り方
1.バターをちぎったものをボウルに入れ、手で揉んで軟らかくしてから木ベラで更に滑らかにする。
2.そこに砂糖類を5回に分けて、その都度100回ずつ混ぜる。
(左回りに9回混ぜ、10回目で右回りに1回混ぜ、周りを払う。それを10回行う)
ほぐした卵も5回に分けて、同様にその都度100回ずつ混ぜる。
3.アーモンドパウダーは一度に加え、50回まぜる。
薄力粉は2回に分け、一回目は木ベラでボウルの向こう側から手前に
返すように混ぜ、粉が大体見えなくなったら残り1/2を加え、
木ベラで押しつぶすように混ぜ最後にカートで底の生地を返すようにして
一まとめにする。
4.ビニール袋に入れ一晩休ませる。
◇アーモンドクリーム
酸味の強いリンゴに、甘さの効いたアーモンドクリームが合わさることで、単に酸っぱいだけではない美味しさを醸し出してくれます。
あまり少ない分量だと仕込みにくいので、およそ2台分で作ります。
材料/21cmタルト型およそ2台分
・発酵バター(食塩不使用) 100g・粉糖 80g
・全卵(L) 1個
・サワークリーム 10g
・スキムミルク 5g
・バニラオイル 2〜3滴
・皮付きアーモンドパウダー 120g
準備
* 粉糖は2回ふるっておく。* バターを薄く切ってボウルに並べ、軟らかくなるまで常温に置いておく。
作り方
1.バターを指で押してみて凹むくらいになったら、全体が均一になるようにゴムベラや木ベラで混ぜ合わせる。
2.そこに振るっておいた粉糖を5回に分けて加え、その都度タルト生地の
作り方と同様に100回ずつ混ぜる。
(時々回りやヘラをはらうと全体が満遍なく混ざる。)
3.全卵を溶きほぐし8〜10回に分けて加え、その都度100回ずつ混ぜる。
4.サワークリーム、スキムミルク、バニラオイルを加え全体を満遍なく混ぜる。
5.アーモンドパウダーの1/2を加え、ゴムベラで切るように混ぜる。
残りの1/2を加え、空気が入り過ぎないように円を描くようにゆっくり
50回ほど混ぜ、密閉容器に入れて冷蔵庫で一晩休ませておく。
◇コンポート
隠し味のコンポートです。このコンポートがあるのと無いのでは雲泥の差ですので、頑張ってひと手間かけてね!
材料/サワールージュ2〜3個分
・サワールージュ(皮を取って) 500g・グラニュー糖 90g
・バニラビーンズ 2cm
作り方
1.サワールージュ(以下リンゴ)の皮をむき、縦に8等分してからスライスしていく。(変色しないようにスライスしたらすぐ1%の塩水に浸けて
おく。全部を切り終えて塩水に浸けたら水を切り、一度流水で塩分を洗い
流して使う。)
2.耐熱ボウルにスライスしたリンゴを入れ、上からグラニュー糖をかけて
全体を混ぜ合わせ、切込みを入れたバニラビーンズも加えたら、ふわりと
ラップをかけ電子レンジで(500W)6分加熱する。
(600wの場合は4分50秒程度)
3.6分レンジにかけたら一度取り出し、全体を混ぜ合わせ加熱ムラの
ないようにする。
4.その後、更に4分レンジで加熱(600wは3分15秒程度)したら取り出し、
ふわりとかけていたラップで落し蓋のようにリンゴに密着させて冷ましておく。
◇タルト生地の伸ばし方
1.キャンパス地か台の上に打ち粉(強力粉)をして、寝かせた生地
(およそ半分)を取り、麺棒で5mmの厚さに伸ばす。
(型よりも二周りくらい、大きくのばすこと)
2.ピケ(フォークなどで軽く表面を刺しておくこと)をしたら、
打ち粉をした面を上にして型にかぶせ(粉っぽさを舌で直接感じないように
する為)、型からはみ出した生地を両手で型の内側にそっと押し込む感じで
型に寄せ、縁の部分は指先でよく押さえながら、側面に生地を貼り付けてゆく。
3.型の上に麺棒をころがして余分な生地を落とし、型の側面を親指で押して
厚さを揃え、飛び出した部分はカードで切り落とす。
4.成型したら、冷蔵庫に入れて、最低1時間以上休ませる。
(充分休ませないと、焼き縮みするので、気をつけて!)
* 仕込んだ生地は翌日すべて成型し、ビニール袋などに入れ冷凍しておき、
一週間のうちに焼くこと。そのまま冷蔵保存して成型すると、
焼いたときにバターがもれ出るなどして、歯ざわりのガリガリしたものに
なるので注意。
(麺棒状に成型して、輪切りにし焼いておくと簡単便利。tea timeにも
goodですよ!)
◇タルトを焼く
見た目はシンプルですが、中は三層構造になっているスペシャルタルトです。
材料/21cmタルト型1台分
・サワールージュ 2〜3個・溶かしバター 小さじ2
・バニラシュガー 小さじ1〜2
準備
* 前日に仕込んだアーモンドクリームの半分を、室温において軟らかくしておく。組み立て方
1.軟らかくしたアーモンドクリームを1cmの丸口金を付けた絞り出し袋に入れ、成形したタルト生地の中心部から外側に向かって渦巻き状に
絞り出し、表面をゴムベラなどで平らにしておく。
2.その上にコンポートを120〜130gスプーンで乗せていく。
3.リンゴは布巾などを使って表面を充分に洗い、水気を拭き取ったら縦に
4等分して種の周りや上下の硬いところを取り除き、縦に2〜3mm.の厚さに
スライスし、少しずつずらしながらタルトの円周に沿って並べていく。
パンプキンタルト(2008年9月30日掲載)を参照するとわかりやすいので、
ぜひご覧ください。
4.2段目は逆向きに並べていき、3段目は大きいままだと並べにくいので
半分に切って2段目と逆向きに並べ、更に真ん中が下がらないように
小さくなったリンゴを重ね、厚切りのまま星型で抜いたリンゴを乗せる。
5.レンジで溶かしたバターを、刷毛でていねいにリンゴの上に乗せていく。
(せっかく並べたリンゴが動かないように、塗るというより置いていく
感じにするとよい。)
6.その上からバニラシュガーを満遍なく振りかけ、天板ごと230℃に予熱した
オーブンで30〜35分焼いていく。高温で焼くため焦げやすいので
やや短めに時間をセットして、あまりに焦げそうな時には一旦取り出し、
アルミホイルで覆って焼くこと。
ガスオーブンの場合は熱量が多いので、温度は210℃で25分くらいを目安に
焼いていく。こちらも同様に焦げそうな時は早めにアルミホイルで覆うこと。
7.タルト生地やリンゴに充分焼き色が付いたら出来上がり。オーブンが
かなり高温になっているので、火傷しないように気をつけて取り出し、
ケーキクーラーに乗せて冷ます。
温かいうちに型から取り出そうとすると、タルト生地が崩れるので注意。
8.充分に冷めてから静かに型から外し、カットしてからオーブントースター
やオーブンで温めて召しあがれ♪
* リンゴから水分が出てきてしまうので、焼いた次の日には食べきりましょう。
◇バニラシュガー
カスタードクリームなどに使ったバニラビーンズを洗って充分に乾燥させ、ビンなどに入れたグラニュー糖にどんどん加えていくとバニラの甘い香りが残って、生クリームを泡立てる時や今回のようにタルトを焼くときなどに大活躍します。プレーンな紅茶に入れてもgood!
【待望の新品種サワールージュ】
2010年10月4日の河北新報朝刊に掲載された記事に釘付けになった私。それは宮城県が初めてリンゴの新品種を開発したと言うものでした。お菓子を手作りする身にとっては、妙にその記事が気になってしまい、なんとか手に入れたいと無理をお願いして開発者である宮城県農業・園芸研究所の菊地秀喜総括研究員を訪ねました。
「サワールージュ」は今年(2010年6月)出願公表され、リンゴとしては宮城県初のオリジナル品種です。
名前の通り酸味が強く、紅のような赤い表皮が特徴で「ふじ」の自然交雑した実生から、着色や耐病性に優れた系統を順次選抜し栽培されてきました。
「桃栗三年柿八年」と言われますが、なんとリンゴは更に長く、播種から十年もの歳月を経てやっと花が咲く果樹だそうです。
それを順次選抜して毎年栽培し、遺伝形質が固定化するのを確認するまで莫大な時間と手間をかけて開発されました。
「サワールージュ」はおおよそ9/15〜10/10(宮城県標準)に収穫される早生種で、一個あたりの重量は220g〜280g、一本の木から30〜40kg.の収穫が可能だそうです。
これまで加工用としては同じように酸味の強い「紅玉」があったわけですが、こちらの収穫時期は10/10〜10/25くらいで、ちょうどサワールージュと紅玉は収穫のバトンタッチが行われるため長期間にわたって加工用が確保できるようになるということです。
【今後の展望】
今年は6軒の農家で試験栽培が行われたそうですが、来年にはかなり作付けを増やす予定のようです。
しかし接木で増やしたとしても三年程収穫は期待できないらしく、喉から手が出るほど欲しくても、この三年の間は一気に収穫量が増えることはないようです。
実はこの「サワールージュ」はだいぶ前に完成していたそうですが、長いこと発表を躊躇していたのだとか。
それというのも、近年は糖度の高いフルーツが好まれる傾向が続いていたため、こんなに酸っぱいリンゴは消費者に受け入れられないのではないか・・・?そんな不安が常に頭にあって発表に踏み切れずにいたそうです。
しかしながら、実は飲食店や製菓関連の方々からは「酸っぱいリンゴ」は熱望されていたのです。
そもそも酸っぱいリンゴは生食ではなく、料理やデザート、お菓子の材料として加工されたのち消費者に提供されるのがほとんどなわけで、生食を目的とした糖度の高いリンゴとは決定的に異なっています。
2010年11月19日に行われた宮城県主催の「食の見本市」では、たくさんの方々がブースに集まっては質問されていました。
なにしろ宮城県のオリジナル品種ですから、期待度が高いのも当然と言えば当然です。これまで「紅玉」以外に酸味の強いリンゴは手に入らなかったわけですから、飲食店や製菓関連では、遣える加工用のリンゴは絶対的に不足していたのです。
もうしばらく待たなければいけませんが、いずれ思う存分「サワールージュ」を満喫できる日がやってくることでしょう。
そのためにも、個々の飲食店や製菓店単独でイベントを行うのではなく、業界全体が手を携えてプロジェクトを組み、一人でも多くの消費者にサワールージュの存在を知ってもらうことが大事な気がします。
販路が拡大しないことには導入する農家の方々も不安になるでしょうし、せっかくのオリジナル品種といっても先細りになってしまっては意味がありません。
春先になるとどこでも「苺フェア」などが行われるように、2011年の秋には「サワールージュ」の一大イベントが開催されるよう大いに期待しています。
【あとがき】
サワールージュを生で試食させて頂いた時、一瞬で子供の頃の記憶が蘇ってきました。それほど幼い頃食べた味わいに似ていたのかもしれませんが、インパクトのある酸味が心地よく、遠い記憶さえ呼び戻す力に正直驚きました。
近年、競い合うようにフルーツの糖度は上がり続け、気が付くとどんな果物でも枕詞のように「甘くて美味しい!」がうたい文句でした。 しかしながら、個人的には果物は甘味と酸味がバランスよく含まれた物の方が美味しいと常々思っていた者にとっては、この新品種の登場は心躍るものでした。
これから毎年9月下旬には、あの真っ赤なリンゴが待っていると思うと本当にワクワクします。
手作り派の皆さんの手元にも、できるだけ早くサワールージュが届くことを願っています。
