
次世代に伝える『おふくろの味』
私が子供の頃、稲刈りの季節になると母がよく作っていたメニューです。機械化になり始めたといっても、まだまだ手作業の部分が多く、父も母も朝から晩まで働き通しでした。
その上家事までこなさなければいけない母にとって、栄養価も高く、保存が利くメニューは必要不可欠だったのでしょう。私達姉妹が寝る時間になっても一人で台所に立ち、仕込みをしている姿を今もよく思い出します。
当時の我が家では、秋刀魚をお刺身で食べたことはなかったように思います。おそらく生だとお腹を壊す可能性もあって、農繁期には敬遠していたのでしょう。(今のように、流通技術も保存技術も良くなかったので、鮮度が良くなかったのかもしれませんね)そんな中で、しっかり加熱した「サンマの南蛮漬け」は、家族みんなが安心して食べられるメニューだったに違いありません。(もちろん私も大、大、大好きなメニューでした!!)
何よりも驚くのは、お酢の疲労回復作用と玉ネギの血液サラサラ効果、更に秋刀魚のEPAやDHAが相まって、元気になること間違いなし!のメニューなのです。当時の母は、そんな科学的な裏づけは知らなかったのでしょうが、改めて「サンマの南蛮漬け」の凄さを感じました。
そろそろ夏の疲れが出てくる季節。家族の元気の為にも作ってみる価値ありですよ!!
材料(4人分)

・塩(サンマの下味用) 適量
・コショウ 適量
・小麦粉 適量
・揚げ油 適量
・ピーマン 1個
・玉ネギ 1個
(大きめの物/皮をむいて400g位)
・人参(太めの物) 5cm
・赤唐辛子の小口切り 1本分
・酢 1カップ(200cc)
・砂糖 大さじ6
・しょう油 大さじ4
・塩(漬け汁用) 小さじ1/4
・天盛り(みょうが・しその葉の千切り・ししとうの輪切り) 適量
準備
*ピーマンは種を取り縦長に千切りにしておく*玉ネギは皮を剥き、縦半分にしてから繊維に沿って薄くスライスしておく
*人参は繊維に沿って縦に千切りにしておく(細めの方が食べやすい)
*赤唐辛子・酢・砂糖・しょう油・塩を密閉容器に全て入れ、砂糖や塩が
残らないようによく混ぜて漬け汁をつくっておく
*サンマは3枚に下ろし、長さを半分にしておく
(下ろせない方は、お店に頼むと裁いてもらえるのでそれを用意する)
*天盛り用の野菜を切っておく。みょうがは縦半分に切ってから、繊維に
沿って薄くスライスする。しその葉は縦半分に切ってから千切りにする。
しし唐は輪切りにして種を抜く。
(それぞれ乾燥しないように、濡らしたペーパータオルに挟んでおく)
作り方
1.サンマの水気をペーパータオルなどで丁寧にふき取り、軽く塩・コショウをして小麦粉を付けたら、余分な粉を叩いて落とし、170〜180℃の油できつね色に
なるまで揚げていく(油の温度が下がってしまうとカラッと揚がらないので、
入れ過ぎに注意!)
2.軽く油を切ってから、熱いうちに用意しておいた漬け汁に入れる。
3.野菜類は先に全体を混ぜ合わせてから、同様に漬け汁に入れる。お皿などで
重しをして野菜が早くなじむようにしておくと、早めに食べられる。
4.冷めてから冷蔵庫に入れ半日くらい漬け込むと、味がなじみさらに野菜も
しんなりしてきて食べやすい。
5.冷蔵庫で保存すれば4〜5日は充分に日持ちする。
6.食べるときに、しそやみょうがなどの天盛りを添えると一層美味しい。
*私の家族は残念ながら酸っぱいものがあまり得意ではないので、ちょっと
砂糖を多めにしてマイルドな味にしていますが、キリッとした酸味が
お好きな方は、柚子やレモン・すだちなどを絞って召し上がって頂くと、
より風味豊かな味わいになります。
*野菜から水分が出ることを想定した配合になっていますので、野菜が
少ないときにはしょう油を控えるなどして調整してください。
*ピーマンが苦手な方は、長ネギの青い部分やセロリなどでも美味しく作れます。
*小さなお子さんが召し上がるときは、赤唐辛子を入れずに作り、大人用に
七味や一味唐辛子をかけて食べると良いでしょう。
「南蛮漬け」の由来
諸説あるようですが、江戸時代にポルトガル人が長崎に伝え、そこから全国に広がったとされています。@外国から来たものを「南蛮渡来」と言うようになり、「南蛮」という言葉はしだいにヨーロッパを始め異国全体を意味する言葉となり、異国風の料理や食材、新しい調理法にも「南蛮」の名が付いた。(砂糖を使う物・唐辛子や葱を使う物・油で揚げる物など)
A東南アジアやそこを経由してきたスペインやポルトガルの人々が持ち込んだ唐辛子や葱、香料などを「南蛮」と呼び、それらを使う料理なのでその名が付いた
Bスペインやポルトガルの料理「エスカベーシュ」(小魚をから揚げにし、香味野菜と一緒に酢に漬け込んだ料理)を、日本にやって来た南蛮人が作っていたのを、日本人がまねて作ったことから「南蛮」の名が付いた。
多くの方に愛される「南蛮漬け」だけあって、たくさんの謂れがありますが、日本料理の歴史と照らしあわせると、どれも納得の感があります。
江戸時代から現代まで受け継がれている「南蛮漬け」ですが、私が母から受け継いだように「我が家の味・おふくろの味」として息子にも伝えて行きたいと思っています。